リハ栄養

リハビリテーション栄養とは?病院・介護現場での考え方をわかりやすく解説【2026年版】


「リハビリを続けているのに、なかなか筋力がつかない」

「最近、食事量が減って体重も少し落ちてきた」

「以前より歩けなくなっているけれど、運動量だけを増やしてよいのだろうか」

病院や介護現場で働いていると、このような場面に出会うことがあります。

身体機能を維持・改善するためには、リハビリテーションや運動が大切です。

一方で、身体を動かすためにはエネルギーが必要ですし、筋肉を維持するためには栄養状態も関係します。

そこで知っておきたい考え方の一つが、**「リハビリテーション栄養(リハ栄養)」**です。

リハ栄養という言葉を聞くと、

「たんぱく質を多く摂ること?」

「栄養は管理栄養士が考えることでは?」

「リハビリ職や介護職も栄養を見る必要があるの?」

と感じる方もいるかもしれません。

ですが、リハ栄養は単に栄養を増やしたり、プロテインを摂ったりすることではありません。

この記事では、日本リハビリテーション栄養学会や厚生労働省、国際的な低栄養・サルコペニアの基準などを参考にしながら、病院や介護現場で知っておきたいリハ栄養の基本をできるだけ分かりやすく整理していきます。


リハビリテーション栄養とは?

リハビリテーション栄養は、

「リハビリを行っている人に栄養を追加すること」

だけを意味するものではありません。

日本リハビリテーション栄養学会では、従来から栄養障害やサルコペニア、栄養摂取の過不足などを評価しながら、リハビリテーションと栄養管理を組み合わせて生活機能やQOLの向上を目指す考え方が示されています。

さらに2025年に公表された「リハビリテーション栄養3.0」では、身体面だけではなく、心理面・社会面・スピリチュアル面・テクノロジーなども含めた包括的で個別的なアプローチへと考え方が広がっています[1]。日本リハビリテーション栄養学会

少し難しく聞こえるかもしれません。

現場では、

「運動だけを見るのではなく、その人が動くための身体・栄養・生活全体を見る」

と考えると分かりやすいでしょう。

例えば、歩行能力が低下している高齢者がいたとします。

そこで、

「脚の筋力が弱いから筋力トレーニングを増やそう」

と考えるだけではなく、

「最近、体重は減っていないかな?」

「食事量は落ちていないかな?」

「食べにくくなっていないかな?」

「活動量そのものが減っていないかな?」

「病気や炎症の影響はないかな?」

といったところまで考えます。

こうした視点が、リハ栄養の基本になります。


なぜリハビリと栄養を一緒に考えるの?

リハビリでは、

歩行練習
筋力トレーニング
立ち上がり練習
日常生活動作練習

など、さまざまな身体活動を行います。

当然ですが、身体を動かすためにはエネルギーが必要です。

さらに、筋肉を維持したり身体機能を回復したりするためには、運動だけでなく栄養状態も関係します。

例えば、

十分に食べられていない

↓

体重や筋肉量が減る

↓

活動することがつらくなる

↓

さらに活動量が減る

という悪循環になることもあります。

反対に、

「栄養状態を改善すれば必ず筋力が上がる」

という単純なものでもありません。

身体機能が低下している背景には、

病気
炎症
食欲低下
嚥下機能
口腔状態
薬剤
活動量低下
心理状態
生活環境

など、さまざまな要因が関係します。

そのため、

「運動だけ」

でも、

「栄養だけ」

でもなく、両方を合わせて考えることが大切です。


現場でまず確認したい5つのポイント

リハ栄養というと、難しい栄養計算をイメージするかもしれません。

ですが、最初から複雑なことをする必要はありません。

普段の介護やリハビリの中で、まずは次のような変化に気づくことが大切です。

確認すること現場で見るポイント
体重最近、体重が減っていないか
食事食事量や食欲が落ちていないか
身体機能歩行・立ち上がり・筋力などが低下していないか
活動量横になっている時間や座っている時間が増えていないか
口腔・嚥下食べにくさ、むせ、口腔状態の変化がないか

例えば、

「以前は毎食ほぼ完食していたのに、最近は半分程度しか食べていない」

「ここ1〜2か月で体重が減ってきた」

「以前より立ち上がりに時間がかかる」

「リハビリ中に疲れやすくなった」

といった変化があれば、栄養状態について考えるきっかけになります。

大切なのは、

一つの数字だけで判断しないこと

です。

体重、食事、活動量、身体機能などを合わせて見ることで、その人の変化に気づきやすくなります。


低栄養とは?

リハ栄養を考えるうえで、知っておきたいのが低栄養です。

成人の低栄養については、国際的な診断の考え方として「GLIM基準」があります。

GLIMでは、まず低栄養のリスクをスクリーニングし、その後、

体重減少

低BMI

筋肉量の減少

といった身体の変化と、

食事摂取量の低下

病気や炎症

などを組み合わせて評価します[2]。PubMed

つまり、

「アルブミンが低いから低栄養」

と、一つの検査値だけで判断するわけではありません。

体重や筋肉、食事量、病気の状態などを総合的に確認します。

GLIM基準の具体的な評価方法や基準値については、別の記事で詳しく解説します。


サルコペニアも知っておきたい

もう一つ、リハ栄養と関係が深いのがサルコペニアです。

サルコペニアは、加齢などを背景として筋力や筋肉量、身体機能が低下する状態です。

アジアのサルコペニア診断基準であるAWGSでは、筋力、身体機能、筋肉量などを組み合わせて評価する考え方が示されています[3]。PubMed

リハビリや介護の現場では、

「最近、歩く速度が遅くなった」

「立ち上がりが難しくなった」

「以前より力が弱くなった」

といった変化に気づくことがあります。

こうした変化を、

「高齢だから仕方ない」

だけで終わらせず、

活動量
筋力
栄養状態
体重変化

などを合わせて考えることが大切です。

サルコペニアの診断基準や具体的な評価についても、今後別の記事で詳しく取り上げます。


病院でリハ栄養を考える場面

病院では、病気や手術をきっかけに活動量が大きく低下することがあります。

さらに、

食欲低下
絶食
嚥下障害
炎症
安静
入院生活による活動量低下

などが重なることもあります。

例えば、

「歩行練習をもっと増やしたい」

と考えていても、

食事量が大きく減っていたり、体重が減少していたりするのであれば、一度栄養状態についても確認してみる必要があります。

リハビリ職が一人で栄養管理まで行うという意味ではありません。

むしろ、

「リハビリ中に気づいた変化を、多職種へつなぐ」

ことが大切です。

例えば、

「最近、歩行練習中の疲労が強くなっている」

「体重も減っているようだ」

「食事摂取量も少ない」

という情報があれば、

医師
管理栄養士
看護師
言語聴覚士
リハビリ職

などで情報を共有しながら原因を考えることができます。


介護事業所でリハ栄養を考える場面

介護現場では、病院とは少し違う強みがあります。

それは、

利用者さんの日常生活を継続して見られること

です。

例えば、

「最近、食事を残すようになった」

「服が少しゆるくなった」

「以前より昼間に横になることが増えた」

「デイサービスへ来ても運動をしたがらなくなった」

「立ち上がりに時間がかかるようになった」

といった変化があります。

一つひとつを見ると、小さな変化かもしれません。

ですが、

食事量が減った

+

体重が減った

+

活動量が減った

+

歩行能力も低下してきた

と複数の変化が重なっているのであれば、栄養状態や身体機能について一度確認するきっかけになります。

介護現場では、

食事

活動

リハビリ

口腔

生活

を別々に見るのではなく、できるだけつなげて見ることが大切です。


国も「リハビリ・栄養・口腔」を一緒に考える方向へ

医療・介護制度でも、リハビリ、栄養、口腔を一体的に考える流れが進んでいます。

令和6年度介護報酬改定では、厚生労働省から「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組」に関する通知や計画書が示されています[4]。厚生労働省

さらに令和8年度診療報酬改定でも、地域包括ケア病棟などでリハビリテーション・栄養管理・口腔管理を連携して行う取組が進められています[5]。厚生労働省

つまり、

「リハビリはリハビリ部門だけ」

「栄養は管理栄養士だけ」

「口腔は歯科だけ」

と完全に分けて考えるのではなく、必要な情報を多職種で共有していくことが重視されています。


リハ栄養は誰が行うの?

リハ栄養は、一つの職種だけで完結するものではありません。

例えば、

医師
病気や治療方針、医学的な状態を確認する

管理栄養士
栄養状態や食事内容、必要な栄養量などを専門的に評価する

看護師
全身状態や食事摂取、日々の変化を確認する

PT・OT
身体機能、活動量、ADLなどを評価する

ST
摂食嚥下機能や食べる能力を評価する

介護職
食事や生活場面、日々の小さな変化に気づく

といったように、それぞれ違った情報を持っています。

大切なのは、

全員が栄養管理をすること

ではありません。

それぞれの職種が気づいた情報を共有すること

です。

例えば介護職が、

「最近、食事を半分くらい残すようになった」

と気づいたことが、低栄養を考える重要な情報になるかもしれません。

リハビリ職が、

「以前より歩行練習で疲れやすくなっている」

と感じたことも同じです。


リハ栄養を始める3つのステップ

「リハ栄養を始めよう」

と考えても、最初から複雑な栄養評価をする必要はありません。

まずは、次の3つから考えると分かりやすいでしょう。

STEP1 変化に気づく

まずは、

体重
食事量
活動量
身体機能
口腔・嚥下

などの変化を確認します。

例えば、

「最近体重が減っている」

という一つの変化からでも構いません。


STEP2 「なぜ?」を考える

次に、

「なぜ体重が減っているのだろう?」

と考えてみます。

食欲がないのか。

食べにくいのか。

病気の影響なのか。

活動量が変わったのか。

薬剤の影響はないか。

生活環境が変わっていないか。

原因は一つとは限りません。


STEP3 必要な職種へ共有する

気づいた情報を、

医師
管理栄養士
看護師
介護職
リハビリ職

などで共有します。

例えば、

「1か月前より体重が減っていて、最近は食事量も減っています。リハビリでも以前より疲れやすくなっています。」

という情報だけでも、多職種で考えるきっかけになります。

リハ栄養は、

一人で栄養計算をすること

から始めるのではなく、

変化に気づき、共有すること

から始めてもよいのです。


リハ栄養でよくある3つの誤解

「たんぱく質をたくさん摂ればいい?」

たんぱく質は筋肉を考えるうえで重要な栄養素です。

ただし、

「筋力が低下している=とにかくたんぱく質を増やす」

とは限りません。

必要なエネルギー量や栄養量は、体格、病気、腎機能、活動量、現在の栄養状態などによって異なります。

具体的な摂取量については、個々の状態を評価したうえで考える必要があります。


「アルブミンが低ければ低栄養?」

アルブミンは臨床でよく確認される項目ですが、一つの検査値だけで低栄養を判断するものではありません。

GLIM基準でも、

体重減少
BMI
筋肉量
食事摂取
病気・炎症

などを組み合わせて評価します[2]。PubMed


「栄養は管理栄養士だけが見ればいい?」

管理栄養士は栄養管理の専門職です。

一方で、

「食事量が減っている」

「筋力が落ちている」

「体重が減っている」

「活動量が減っている」

という変化に最初に気づくのは、介護職や看護師、リハビリ職かもしれません。

そのため、

全員が栄養管理をするのではなく、全員が栄養状態に関心を持つ

という考え方が大切です。


リハ栄養をもっと詳しく知りたい方へ

この記事では、リハビリテーション栄養の全体像を中心に紹介しました。

今後は、

高齢者の低栄養をどう見つける?

GLIM基準とは?

サルコペニアとは?

フレイルと運動・栄養の関係

デイサービスで栄養状態をどう確認する?

大腿骨近位部骨折とリハ栄養

脳卒中とリハ栄養

リハビリ・栄養・口腔の一体的取組とは?

などについて、それぞれ詳しく解説していく予定です。

この記事を入口として、気になるテーマから確認してみてください。


まとめ

リハビリテーション栄養は、

「リハビリ中の人に栄養を追加すること」

だけではありません。

その人の、

体重
食事
筋肉
身体機能
活動量
病気
口腔・嚥下
生活環境

などを一緒に見ながら、リハビリと栄養の両面から生活機能の改善を考えていくものです。

特に高齢者では、

「食事量が減っている」

「体重が減っている」

「歩く量が減っている」

「筋力が落ちている」

といった変化が同時に起こることもあります。

そんなとき、

「筋力が落ちたから運動を増やそう」

だけで終わらせず、

「なぜ筋力が落ちているのだろう?」

と一度考えてみることが、リハ栄養の第一歩になります。

そして、一人の職種だけで答えを出す必要はありません。

介護職、看護師、管理栄養士、医師、リハビリ職、歯科専門職など、それぞれが持っている情報を共有しながら、

「この人がどのような生活を送りたいのか」

という目標に向かって考えていくことが大切です。

次の記事では、

「高齢者の低栄養をどう見つける?介護・リハ職が確認したいポイント」

について、より具体的に解説していきます。


参考資料

[1]日本リハビリテーション栄養学会「リハビリテーション栄養3.0―包括的かつ個別的なリハ栄養の普及と進化」
2025年のポジションペーパーで、現在のリハ栄養の考え方がまとめられています。日本リハビリテーション栄養学会 ポジションペーパー

[2]GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition
成人の低栄養診断について、体重減少・低BMI・筋肉量などの表現型と、摂取量低下・炎症などの病因を組み合わせて評価する国際的なコンセンサスです。PubMedでGLIM基準を確認する

[3]Asian Working Group for Sarcopenia 2019 Consensus Update
アジアにおけるサルコペニアの評価・診断の考え方がまとめられています。PubMedでAWGS 2019を確認する

[4]厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組」に関する通知や様式が掲載されています。厚生労働省 令和6年度介護報酬改定

[5]厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」
地域包括ケア病棟などにおけるリハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的な取組について示されています。